「退院勧告」を息を次ぐ間もなく、一気に読了しましたが、著者・ご子息の雄々しさにただただ感動いたしました。 日米の医療制度を比較していつも思うのは、「疾病=急性期ケア=医療」と「傷害=長期ケア=福祉」という不思議な線引きが、日本の医療を著しく歪めているということです。何故こうなったかというと、日本の医療制度は「サービスを施してやる」という行政家の都合でつくられたものであり、「サービスの受け手」の視点からつくられたものではないからです。本来、急性期のケアも長期ケアも医療であることには変わりがあるはずがないのです。病に悩む人がケア(=医療)を必要としている時に、医療とか福祉とかの線引きは、患者にとっては何の意味も持たないのです。医療と福祉の人工的線引きは医療者の意識をも歪め「医療の役割は済んだのだから退院してくれ、退院した後のことは俺達は知らない、福祉が何とかするはずだ」と、「急性期ケアの終わり=医療の終わり」という誤解を医療者の間に生み出してしまいました。 急性期ケアの後、患者は回復期ケア或いは長期ケアを必要とするのであって、次のレベルの医療に引き渡すというのが、本来の発想であるべきはずなのです。アメリカの病院では「ケースマネージャー」という職種があり、退院後のケアについての段取りをし、「退院しても大丈夫」ということを保証する責務を負っています。今後、日本の医療においても「社会適応入院の根絶」「入院短縮化」という圧力がますます強くなることが予測されますが、「退院しても大丈夫」と保証する体制を整えることを忘れたまま、「急性期ケアだけが医療」という根本的誤解が深化することを非常に危惧します。介護保険も「長期ケアを医療から切り放す」ことが目的としか私には見えません。 今回は良書に巡り会う機会をお与えいただき本当にありがとうございました。「医療」と「福祉」という日本にしかない人工的線引きを作った行政家達に、行政が作った線引きの狭間に落ちた人々の悲痛の叫びを聞かせる必要があると考えます。「厚生大臣・厚生官僚必読の書」というのが私の思いです。
レスピレーターのウイニングに看護婦が参加しなかったこと、退院勧告について病院側と話し合うくだり。大学病院に勤務する私は、正直言ってこれが現実かと驚きで胸がつぶれそうになる。18年間、当該施設の看護の独自性は読みとれない。(中略)18年もの間、レスピレーターを装着しながら生命にかかわる合併症が発生しなかったのは、患者である息子への、著者の深い愛情と、優秀な看護婦としての理論に裏付けされた専門的知識・技術の結集だと言いきれる。「本書は決して退院を勧告する病院への告発を目的に書くものではない。揺れ動く医療行政のなかで苦労する当事者の嘆きを知って欲しいのである。医療者と患者の関係をあらためて考えて欲しいのである。医療(看護)の側にいた私の体験を記すことで、患者が主役の医療と福祉を少しでも早く手にすることを願っている。」(「はじめに」より)
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